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極道恐怖大劇場『牛頭』。「極道恐怖大劇場」とは……読んだまま極道の恐怖劇、 つまり、ヤクザによるホラー映画。では、ヤクザも恐れる「牛頭(GOZU)」とは……？ 「もしデヴィッド・リンチが Ｖシネマ、しかもヤクザものを撮ったらどうなるか」という思いつきが転じて生まれた前代未聞の新ジャンル に三池崇史が挑んだ、 エロくて、怖くて、気持ちいい(!?)怪作。誤って兄貴分を殺害したヤクザが体験する予測不可能な超常現象。 死体が消えるわ、みんなが叫ぶわ、股間から何かが出てくるわ……。誰にも“言えない”オチがアナタを直撃します！ ストーリー あざまわり組構成員の南(曽根英樹)は、兄貴分の尾崎(哀川翔)を尊敬はしていたが、狂人的な奇行にはついていけなかった。 常軌を逸した言動に恐怖を感じた組長(石橋蓮司)は、名古屋にある処理場に尾崎を連れていくよう南に命ずる。 ところが、南は道中に暴れ出した尾崎ともみ合い、うっかり彼を殺してしまったのだ。さらに、その死体は組長に 電話をしている消えてしまったではないか!! 尾崎の亡き骸を探すため奔走する南だが、その間も彼の周りでは 不可解な現象が起こり始めていて……。 |
学生時代からTV番組や映画の助監督をしていた三池崇史。専門学校よりも現場で手段を学んた彼の守備範囲は広く、
劇場公開作品はもちろん、Vシネマ、映画の予告編、村おこし用の映画とどんなものでも作ってしまう。しかし、その柔軟性は
多目的の映像を作ることに収まらない。 「脚本は完成度60％くらいのほうがいい」という彼は、積極的に空白部分の模索を楽しんでいるようだ。物語を強引に、 そして小気味よくあり得ない方向へ持っていってしまうところなどそれを象徴しているのではなかろうか。 例えば『オーディション』。村上龍の同名原作は非情な愛を扇情的に描いた小説だった。ところが、 彼の手によってロマンスのかけらもない、無造作に放り出される切断された足がキリキリ痛くて怖い映画に姿を変えてしまった。 あるいは、『クワイエットファミリー』のリメイク『カタクリ家の幸福』。 なぜか必ず宿泊客が死んでしまうペンションを 経営する一家の苦労を客観的に捕らえた平凡なコメディのはずが、それだけにとどまらずインド産のマサラ・ムービーも お手上げのミュージカル・コメディに仕立ててしまった。今どき場末のスナックでも聴かないような歌謡曲に合わせて踊る様のなんと滑稽なことか。 徹底したチープさが気持ちいい秀作だ。ゴミ袋を身にまとい母乳をしぼりだす内田春菊が鮮烈な『ビジターQ』だってそう。 登場人物が伏線なくして突然狂人的な行動を取る。 挙げていけばキリがないけど、それらがもっとも顕著なのは『DEAD OR ALIVE 犯罪者』。哀川翔、 竹内力の2大Vシネ帝王によるバトルを描いているのだが、ふたりの執念は止まることを知らず、ひいては地球まで破壊してしまう。 それまでの見事な戦いは何だったんだ!? オチに触れるのは通常ルール違反だが、そんなものどうでもよくなるくらいのパワーを持っている。 ラストシーンが少々退屈だからと修正をしただけのことらしいが、なにも地球まで壊さなくても……。直下型の地震みたいに、 思ったことを次から次へと映像に起こし、１本に繋げるとこうなるのだろうか。こんな風に自身で創造することの重要性を体現している 人間が想像の余白を与えそびれるはずもなく、受け手はいつだってワクワクさせられる。 |
